健康被害報告制度と救済制度の重要な違い

フリージャーナリストの藤江氏の情報からです。
健康被害報告制度と救済制度の重要な違いをお伝えします。

前回の記事に加えて、この2つの制度の根本的な違いを整理することで、なぜ今回の数字の乖離が起きたのか、より深く理解できるでしょう。

副反応疑い報告制度(報告制度)

目的

情報収集・監視

- 予防接種法第12条に基づく法的義務
- ワクチンの安全性監視(サーベイランス)
- 因果関係の有無に関わらず「疑い」段階で報告
- 医師による迅速な報告が求められる

報告基準

- 接種後の一定期間内に生じた症状
- 因果関係は問わない(疑いがあれば報告)
- 比較的低いハードル

審査プロセス

- 厚生科学審議会での専門家評価
- 科学的データの蓄積が主目的
- 個別の救済は直接の目的ではない

健康被害救済制度(救済制度)

目的

被害者への補償・救済

- 予防接種法第15条に基づく国の救済責任
- 個人への具体的な金銭補償
- 因果関係の認定が必須条件
- 迅速な救済よりも慎重な審査

認定基準

- 予防接種と健康被害の因果関係
- 医学的妥当性の厳格な審査
- 他の原因の除外
- 非常に高いハードル

審査プロセス

- 疾病・障害認定審査会での審査
- 医学専門家による詳細な検討
- 複数段階の慎重な審査

なぜ数字に乖離が生まれるのか

1. 制度の性格の違い

報告制度は「早期警戒システム」、救済制度は「事後補償システム」という根本的な違いがあります。

2. 医師の認識格差

- 報告制度:「疑いがあれば報告」という理解不足
- 救済制度:遺族が申請時に因果関係を強く主張
- 結果として、医師が「関係ない」と判断したケースでも、救済制度では認定される場合がある

3. 時間軸の違い

- 報告制度:接種後比較的短期間での報告が想定
- 救済制度:接種から「数年後」でも申請可能
- 長期間経過後に健康被害が明らかになるケースは報告漏れしやすい

4. 情報の非共有

最も重要な問題は、救済制度で認定された事例が、報告制度にフィードバックされていないことです。

制度間連携の課題

現在の制度では

- 救済認定→報告制度への自動的な情報反映なし
- 両制度が独立して運用
- 統合的な安全性評価が困難

理想的には

- 救済認定事例の報告制度への自動登録
- 両制度のデータベース統合
- リアルタイムでの安全性評価

今回の意味するもの

1,031件の救済認定のうち351件しか報告されていないということは、日本のワクチン安全監視体制に構造的欠陥があることを示しています。

これは単なる「報告漏れ」ではなく、制度設計の根本的見直しが必要な問題です。

改善への道筋

短期的対策
- 両制度のデータベース突合の常態化
- 救済認定事例の報告制度への遡及登録
- 医師への制度理解促進

長期的改革
- 両制度の統合的運用体制構築
- 能動的サーベイランスの導入検討
- 国際基準に合わせた制度改革

まとめ

今回明らかになった数字の乖離は、2つの独立した制度の構造的問題を浮き彫りにしました。どちらも重要な制度ですが、相互連携の不備が国民の安全を守る上で大きな課題となっています。

この問題の解決には、技術的改善だけでなく、制度そのものの根本的見直しが必要でしょう。国民の健康と安全を真に守るためには、感情論ではなくシステム全体の改革に向けた建設的な議論が求められています。

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