まずは、藤江さんありがとうございます。
会見で藤江氏が行った質問は、実は日本のワクチン安全監視体制の根本的な問題を浮き彫りにしました。福岡厚労大臣は「重要な事実」を認めたのです。
驚くべき数字の乖離
健康被害救済制度で「死亡認定を受けた1,031件」のうち、副反応疑い報告に報告されていたのは「わずか351件」(34.0%)。これは何を意味するでしょうか。
国が「ワクチンによる死亡」と認定し、遺族に4,500万円相当の救済金を支払った事例の3分の2が、副反応疑い報告に記録されていないという事実です。
制度の本来の目的と現実
副反応疑い報告制度は、予防接種法第12条に基づき、医師が一定の症状を把握した場合に厚生労働大臣への報告を義務づける制度です。
この制度の目的は
- ワクチンの安全性についての情報収集・管理
- 専門家による科学的評価の実施
- 国民への適切な情報提供
- 今後の予防接種行政の推進
しかし現実には、国が公式に認めた死亡事例ですら、「適切に報告されていない」という状況が明らかになりました。
制度運用の課題
医師の報告義務について
厚労省は「法令に基づき適切に報告されている」と認識していたと大臣は答弁しました。しかし実際の突合調査結果は、この認識が「現実と大きく乖離」していることを示しています。
突合 (とつごう)
複数のデータや情報を比較し、異同や整合性を確認する行為を指します。
報告漏れが生じる要因として考えられるのは
- 医師の制度理解不足
- 報告手続きの煩雑さ
- 因果関係判断の困難さ
- 時間的制約
今後の改善に向けて
大臣は「氏名等も含めた突合等について作業を進めている」と表明し、より詳細な実態把握に取り組む姿勢を示しました。これは重要な前進です。
副反応疑い報告制度は「受動的サーベイランス」であり、医師の自発的報告に依存する構造的限界があります。
制度の実効性を高めるには
- 医師への継続的な啓発・教育
- 報告手続きの簡素化
- 自治体を通じた報告督促の強化
- システム的な突合チェックの常態化
が必要でしょう。
科学的議論の重要性
この問題は「ワクチンの有効性や安全性」そのものを否定するものではありません。むしろ、「正確なデータに基づく科学的評価」を行うためにこそ、報告制度の適切な運用が不可欠なのです。
厚生科学審議会での専門家による評価も、完全な情報があってこそ、真に科学的で信頼性の高いものになります。
おわりに
ここで、注意をしなければならないのは
患者が報告する救済制度と医師が報告する副反応報告が別物だと言うことです。
では、何が問題なのでしょうか?
患者が申請する救済制度の申請と医師が申請する副反応疑い報告の乖離があり、そこに大きな差があり過ぎるのです。
今回の会見で明らかになったのは、日本の薬事行政における透明性と説明責任の重要性です。制度の不備を認め、改善に取り組む姿勢は評価できますが、より迅速で抜本的な対策が求められています。
私が以前から訴えていました、救済制度の申請が困難な状態と、救済された人は氷山の一角だと言うことも、ここに証明された訳です。
また、経験上、接種済み証を紛失してしまい、再交付の申請を市町村の窓口で行った際に再交付書の医師の欄は黒塗りにされていました。
国民の健康と安全を守るために、感情論ではなく事実に基づいた建設的な議論を続けることが、何より大切だと思います。