誤情報を信じる人」という分類だけで、人を評価してよいのか

東京大学の出した論文がワクチンの接種拒否、誤情報を信じる人ほど「低収入」「政府を理解できない」という、ワクチンで健康被害が出た私には怒りMAXな論文が発表されました。

反論文に入る前に補足として、東京大学の公式発表では、ワクチンに関する誤情報を少なくとも一つ信じている人でも、63.6%は接種済みまたは接種意向ありとされ、誤情報を信じることが必ずしも接種拒否に直結しないと報告されています。

ただし、研究結果の解釈や「誤情報」という分類方法については、健康被害を経験した方の立場から、十分に批判・検証させて頂きます。

反論文

2026年7月31日、東京大学の新世代感染症センターは、日本の一般市民約3万人を対象としたアンケート調査に基づき、ワクチンに関する誤情報と新型コロナワクチン接種意向との関連を分析した研究成果を公表しました。

この研究で注目すべきなのは、ワクチンに関する誤情報を少なくとも一つ信じている人のうち、63.6%がワクチンを接種済み、または接種意向を示していたという点です。つまり、研究自体が、誤情報を信じることとワクチン接種拒否が完全に一致しないことを示しています。

この結果から明らかなのは、「誤情報を信じる人」と「ワクチンを拒否する人」は同じ集団ではないということです。それにもかかわらず、「誤情報を信じる人々」という分類を、非合理的な人、知識のない人、社会的に問題のある人という意味で使用するなら、研究結果を超えた偏見につながります。

「誤情報」の定義を明らかにすべきである

東京大学の発表では、「ワクチンの有効性や安全性に関するデータは捏造されている」などの言説を、ワクチンに関する誤情報の例として扱っています。

しかし、研究を評価するには、どの質問文を用い、どの回答を「信じている」と判定したのかを、論文本文で確認する必要があります。回答者が「完全に信じている」と答えたのか、「可能性があると思う」と答えたのか、「判断できない」と答えたのかによって、意味は大きく異なります。

また、ワクチンの有効性、安全性、接種後の健康被害、因果関係評価、救済制度の運用については、科学的・制度的に議論が続いている論点があります。これらを一括して「誤情報」と分類するなら、何をもって誤りと判定したのか、判定基準と根拠を明示する必要があります。

研究者が正しいと考える結論に合わない意見を、十分な検証なしに「誤情報」と分類することは、科学的な議論ではなく、意見の選別になりかねません。

健康被害を訴える人を排除してはならない

私は、接種後に健康被害を経験した人や、その家族の訴えを、「誤情報を信じている人」という一つのカテゴリーだけで評価することに反対します。

接種後に症状が生じた場合、ワクチンとの因果関係が認定されるかどうかとは別に、まず本人の症状、診療経過、生活上の支障を確認する必要があります。因果関係が医学的に確定していないことを理由に、本人の経験や苦痛まで存在しなかったことにすることはできません。

健康被害を訴える人の中には、ワクチンを全面的に否定している人だけでなく、接種後の症状について説明を求めている人、救済制度の認定基準に疑問を持つ人、政府や専門家の説明の不十分さを批判している人もいます。これらを一括して「誤情報を信じる人」と扱うことは、被害者の声を小さくする危険があります。

この研究が示したのは「因果関係」ではない

東京大学の発表は、2021年9月から10月に15歳から80歳の約3万人を対象に実施されたオンライン調査のデータを用いています。

この研究から分かるのは、特定の回答傾向、情報源、年齢、収入などと、誤情報への同意や接種意向との間に統計的な関連があるということです。しかし、調査結果だけで、「誤情報を信じたから接種を拒否した」「SNSを見たから誤情報を信じた」といった個人レベルの因果関係を確定することはできません。

特に、この調査は2021年の一時点のオンライン調査です。その後、変異株、追加接種、効果の持続期間、副反応に関する情報、接種後健康被害救済制度への関心など、社会状況は変化しています。2021年の回答を、2026年現在の国民の考え方や行動にそのまま当てはめることには限界があります。

「医師・テレビ・新聞・審議会」は常に正しいのか

研究では、誤情報を信じている人の中でも、医師、テレビ、新聞から情報を得ていることが接種意向と関連していたとされています。また、インターネットやSNSから情報を得ていることは、ワクチン忌避と関連していたと報告されています。

しかし、情報源の種類だけで情報の正しさを判断することはできません。テレビ、新聞、行政資料、医師の発言であっても、誤った説明、過度に単純化された説明、後に修正された説明は存在し得ます。逆に、インターネットやSNSにも、一次資料、研究論文、患者の経験、制度資料を確認するための有用な情報があります。

重要なのは、どの媒体を利用したかではなく、情報の内容、出典、発言時点、根拠、反証可能性を検討することです。「テレビや新聞を見たから信頼できる」「SNSを見たから誤っている」という区分は、情報リテラシーの分析としては粗すぎます。

政府情報が信頼されない理由も検証すべきである

研究では、誤情報を信じていない人では政府からの情報が接種意向と関連した一方、誤情報を信じている人では政府情報との有意な関連が検出されなかったとされています。

この結果を、「誤情報を信じる人は政府を理解できない」と解釈するのではなく、なぜ政府情報への信頼が形成されなかったのかを検討すべきです。

たとえば、感染予防と重症化予防の説明が混在していたこと、効果の持続期間について断定的な説明があったこと、副反応や接種後死亡の説明が十分に区別されなかったこと、後に説明が変更されても訂正が十分に伝わらなかったことなどが、政府への不信に影響した可能性があります。

行政や専門家が信頼を回復するには、国民を「正しい情報を信じる人」と「誤情報を信じる人」に分けるだけでは不十分です。過去の説明の限界や誤りを検証し、不確実性を含めて説明することが必要です。

統計的な関連を個人攻撃に利用してはならない

この研究は、誤情報を信じている人の中にも、接種意向を持つ人が多数いることを示しています。これは、「誤情報を信じる人は全員、ワクチンを拒否する」という単純な見方を否定する結果です。

一方で、研究発表に登場する「若年」「低収入」「インターネットやSNS」などの要素が、社会的な偏見を伴って受け止められる危険があります。統計上の関連は、個人の人格、知性、学歴、道徳性を評価するものではありません。

低収入であること、若年であること、SNSを利用することは、それ自体が誤った判断の証拠ではありません。健康状態、職業、家族構成、職場環境、過去の医療経験、情報へのアクセスなど、複数の事情を考慮しなければ、個人を正しく理解できません。

健康被害者として求めること

健康被害を経験した人が求めているのは、単に自分の意見を正しいと認めさせることではありません。

求めているのは、次のような公正な検証です。

- 接種後に生じた症状を、最初から否定しないこと。
- 症状の経過と診療記録を個別に評価すること。
- 因果関係が認定されない場合も、判断理由を具体的に説明すること。
- 救済制度の認定状況と限界を透明化すること。
- ワクチンの効果とリスクを、感染予防・発症予防・重症化予防に分けて説明すること。
- 政府、専門家、メディアの過去の発言を検証すること。
- 「誤情報」という言葉を、異論や被害申告を封じるために使わないこと。

本研究についても、私は研究者個人を攻撃するのではなく、研究方法、分類基準、調査時点、因果関係の限界、政策利用のあり方を検証します。

科学とは、権威の発表を無条件に信じることではありません。データ、方法、前提、限界を公開し、異なる立場から検証できる状態をつくることです。健康被害を訴える人を「誤情報を信じる人」として処理するのではなく、個別の症状と証拠に向き合うことこそ、公共政策に必要な姿勢です。

この論文への批判の要点

・誤情報と接種拒否は同じではない
→研究自身が、誤情報を信じる人の63.6%に接種済み・接種意向があると報告している

・誤情報の定義
→質問文、回答選択肢、判定基準、根拠を明示すべき

・因果関係
→横断的なオンライン調査だけで、情報源が意識や行動を変えたとは断定できない

・調査時点
→2021年のデータを2026年の状況へ一般化する限界がある

・情報源
→テレビ・新聞・医師・政府が常に正しいとは限らず、媒体名だけでは判定できない

・健康被害
→因果関係の未認定と、症状・苦痛の否定は別問題

・政策利用
→誤情報対策」を名目に、被害申告や異論を抑制してはならない

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