
「反ワクだから」で人を片づけないでほしい
ワクチンをめぐる議論で、被害を訴える人と科学をどう考えるべきか
ワクチンについて発信していると、必ずと言っていいほど「反ワク」という言葉が出てきます。
ワクチンに疑問を持つ人を「反ワク」と呼び、
その人の発言を最初から信用できないものとして扱う。
一方で、ワクチンに慎重な側も、
「推進派は全部ウソ」
「製薬会社の言いなり」
「政府は何も信用できない」
と、一括りにしてしまうことがあります。
私は、どちらも危険だと思っています。
なぜなら、その瞬間から私たちは、
「何を言っているのか」ではなく、「どちら側の人間なのか」
で判断するようになるからです。
今回、私はHPVワクチンをめぐる議論について、研究論文、公的機関の資料、疫学研究などを一つずつ確認しました。
そして、あることに気づきました。
それは、
「因果関係が証明されていない」ことと、「その人の症状が存在しない」ことは、まったく別の話だ
ということです。
そしてもう一つ。
「研究に問題がある」ことと、「研究者が被害を捏造した」ことも、まったく別の話です。
この二つを混同しないこと。
私は、ここがワクチン議論の最低限のルールではないかと思っています。
「因果関係が証明されていない」とは
まず、「因果関係が証明されていない」とは何なのか
これは非常に重要です。
医学では、
「ワクチンを接種した後に症状が出た」
という事実だけでは、
「ワクチンがその症状を引き起こした」
とは結論できません。
例えば、
接種
↓
症状
という時間的な順番があったとしても、
時間的に後に起きたことと、原因であることは同じではありません。
これはワクチンに限った話ではありません。
だからこそ医学では、対照群を設けたり、大規模な疫学研究を行ったり、複数の研究結果を比較したりして、他の原因や偶然の可能性をできるだけ排除しようとします。
この意味で、
「接種後に起きたからワクチンが原因だ」
という主張には、慎重さが必要です。
これは正しい。
しかし、ここから、
「ワクチンが原因だと証明されていない」
↓
「だから症状は存在しない」
↓
「だから患者は嘘をついている」
と進んだ瞬間、論理が飛躍します。
因果関係の問題と、症状の存在の問題は別だからです。
厚労省自身も「存在を否定していない
実際、厚労省自身も「症状がある人」の存在を否定していない
現在の厚生労働省のHPVワクチンQ&Aを見ると、接種後に、
* 頭痛
* 腰や関節などの痛み
* しびれ
* 脱力
* 歩行困難
* 不随意運動
* 倦怠感
* めまい
* 睡眠障害
* 月経異常
* 記憶障害
* 集中力低下
など、さまざまな身体症状が報告されていること自体は明記されています。
厚労省の立場は、
「そのような症状を訴える人はいない」
ではありません。
むしろ、症状がある人について診療する協力医療機関まで設けています。
問題は、
その症状とHPVワクチンとの因果関係が証明されているか
という別の問題です。
ここは、きちんと分ける必要があります。
「確立した病気」とは別問題
HANSという言葉は存在する。しかし「確立した病気」とは別問題
HPVワクチンをめぐる議論では、「HANS」という言葉が出てきます。
HANSは、日本の研究者らが提唱した、
HPVワクチン関連神経免疫異常症候群
という概念です。
つまり、
「そんな言葉は存在しない」
という説明は正確ではありません。
実際に研究者が提唱し、論文などで研究されてきた概念です。
ただし、
HANSが国際的に確立された独立疾患として医学界で認められている
とまで言うこともできません。
ここは慎重にする必要があります。
つまり、
「HANSという概念が提唱された」
は事実。
しかし、
「HANSという疾患が医学的に確立している」
は別問題です。
この二つを混ぜてはいけません。
それは「捏造」なのか
研究に問題があったら、それは「捏造」なのか
ここは今回、特に慎重に調べました。
HPVワクチンをめぐって有名になった、池田修一氏らの2016年のマウス研究発表があります。
この研究発表について、厚労省は問題を指摘しました。
特に重要なのが、
各ワクチン1匹という予備的な実験だった
という点です。
そのような小規模な予備実験から、社会的に大きな意味を持つような説明をしたことについて、厚労省は「不適切な発表」として問題視しました。
これは批判されて当然です。
しかし、
「発表が不適切だった」
と、
「研究データを捏造した」
は同じ意味ではありません。
研究不正についての外部調査では、ねつ造・改ざん・盗用などの研究活動上の不正行為は認められなかった、とされています。
つまり、
池田氏側の研究・発表に問題がなかった
とも言えない。
しかし、
池田氏が研究データを捏造したと認定された
とも言えない。
ここを正確に区別する必要があります。
「ない」という主張も注意が必要
「査読論文がない」という主張も注意が必要
さらに調べてみると、池田氏らにはHPVワクチン接種後の症状についての査読誌掲載論文があります。
2017年には、Drug Safety に原著論文が掲載されています。
この研究は、HPVワクチン接種と症状発現の時間的関係を調べたものでした。
しかし、論文そのものが因果関係を確立したわけではありません。
むしろ研究には、
診断基準の妥当性・信頼性が十分に確立されていない
という限界が記載されています。
これは、研究を批判するうえで重要なポイントです。
「査読論文だから絶対に正しい」わけではありません。
同時に、
「問題のある研究だから論文そのものが捏造」
とも言えません。
SPECTについても同じです
脳血流SPECTについても同じです
HPVワクチン接種後の患者について、脳血流SPECTの異常を報告した研究があります。
つまり、
「SPECT異常を報告した研究など存在しない」
という説明は正確ではありません。
一方で、
SPECTで血流低下が見つかった
ことと、
その血流低下がHPVワクチンによって起きた
ことも同じではありません。
SPECTは画像上の血流状態を見る検査です。
仮に血流低下が確認されたとしても、
「なぜ血流が低下したのか」
までSPECTだけで決められるわけではありません。
したがって、
SPECT異常
=ワクチンが原因
という結論にはなりません。
しかし逆に、
一部のSPECT画像について「異常なし」と評価された
=すべての患者のSPECT異常は嘘
という結論にもなりません。
どの患者の画像を、誰が、どの基準で評価したのか。
ここまで確認しなければいけません。
「全員捏造」にはならない
「一部の画像で異常なし」から「全員捏造」にはならない
これは非常に大切なところです。
裁判などで専門家が特定のSPECT画像を見て、
「異常とは言えない」
と評価することがあります。
その専門家の評価は、当然尊重して検討する必要があります。
しかし、その評価対象が数人なら、
その数人についての評価です。
そこから、
「すべての患者の画像が異常なしだった」
とは言えません。
まして、
「診断した医師が患者の被害を捏造した」
とまで結論するには、さらに別の証拠が必要です。
ここは論理として非常に重要です。
名古屋スタディ
名古屋スタディはどうだったのか
ここで登場するのが、約7万人を対象とした名古屋スタディです。
名古屋市は71,177人を対象に調査票を送り、29,846人の回答を分析しました。
24種類の症状について、接種者と非接種者を比較した大規模な疫学調査です。
2018年に発表された研究では、
24症状そのものについて、HPVワクチン接種による有意な増加は確認されなかった
と報告されました。
これは、ワクチンとの因果関係を支持する強い根拠が得られなかったという意味で、重要な研究です。
「何も差がなかった」
ただし「何も差がなかった」わけではない
ここも正確に伝える必要があります。
名古屋スタディでは、症状の発生そのものについては有意な関連が確認されませんでした。
しかし、
・異常な月経血量による受診
・月経不順による受診
・激しい頭痛による受診
・持続する月経血量異常
など、一部の受診アウトカムでは統計的な関連が認められました。
したがって、
「名古屋スタディで何一つ関連がなかった」
という説明も正確ではありません。
正確には、
主要な24症状の発生について有意な増加は確認されなかったが、一部の受診アウトカムには統計的な関連が観察された
です。
科学の議論では、この違いが重要です。
「無意味」という説
「名古屋スタディは健康な人だけが接種したから無意味」という説
これも検証しました。
いわゆる、
healthy vaccinee bias(健康者接種バイアス)
です。
「もともと健康な人ほどワクチンを受けたので、接種者のほうが健康に見えているだけではないか」
という指摘です。
これは疫学上、検討する価値のある問題です。
ところが2024年、名古屋市立大学の鈴木貞夫氏が、名古屋スタディのデータを使ってこの問題を検討しました。
1997~1999年度生まれを対象に、
* 14歳で初回接種した3,246人
* 接種しなかった3,961人
を比較し、接種前の症状を調べています。
その結果、
健康者接種バイアスは大きくは観察されなかった
と結論されています。
ただし、これは「バイアスが完全にゼロ」と証明したものではありません。
ここでも、
「完全に証明された」
という言葉は使わない方が正確です。
再解析も出ている
さらに2025年には別の再解析も出ている
ここが面白いところです。
名古屋スタディのデータを使って、2025年には別の統計解析が行われています。
この研究では、接種者の中で、
症状が接種前に出たのか、接種後に出たのか
を分析しました。
その結果、24症状のうち22症状について、接種後に発症したケースが接種前より多かったと報告されています。
これは無視できない結果です。
しかし、
22/24だったからHPVワクチンが原因だ
とは言えません。
この研究も観察研究です。
時間の経過、年齢、生活環境、その他の要因などを完全に排除できるわけではありません。
つまりこれは、
「因果関係を証明した研究」ではなく、さらなる検討を必要とするシグナルを示した研究
と見るのが妥当です。
「世界の評価」はどうなのか
再解析も出ているはどうなのか
ここまで日本の研究だけを見てきました。
では、WHOやEMAはどう評価しているのでしょうか。
WHOのワクチン安全性専門委員会(GACVS)は、HPVワクチンについて長年、安全性シグナルを検討してきました。
CRPS、POTS、早発卵巣機能不全、自己免疫疾患などについて複数国のデータを検討した結果、
HPVワクチンとの因果関係を示す新たな証拠は確認されていない
としています。
また、日本で報告された疼痛や運動機能障害を含む「多様な症状」についても、接種者だけに現れるものではなく、非接種者にも存在することを踏まえ、
HPVワクチンとの因果関係を示す証拠はない
と評価しています。
EMAもCRPSとPOTSについて、
HPVワクチンとの因果関係を支持する証拠はない
と結論しています。
ここは、ワクチンに慎重な立場から見ても無視できない科学的根拠です。
「患者の症状は嘘」
しかしWHOの結論を「患者の症状は嘘」と読んではいけない
ここが今回の記事で一番伝えたいところです。
WHOが言っているのは、
「HPVワクチンとの因果関係を示す証拠がない」
ということです。
それを、
「患者の症状は存在しない」
と読み替えることはできません。
WHO自身も、重い症状を訴える患者について、専門的な診断と治療を受けることの重要性を述べています。
つまり、
因果関係の評価と、患者への医療的対応は別問題
なのです。
「患者はいない」ではない
厚労省の立場も「患者はいない」ではない
厚労省も、HPVワクチン接種後の「多様な症状」を訴える人について、診療体制を整えています。
また、接種歴のない人にも同様の症状が一定数存在するという全国疫学調査を根拠として、
「ワクチンとの因果関係が証明されていない」
という立場を取っています。
ここで重要なのは、
「接種歴がない人にも同じ症状がある」
という事実は、
「接種後に症状が出た人は嘘だった」
という意味ではないことです。
それが示しているのは、
その症状だけではワクチンが原因だと特定できない
ということです。
これは非常に大きな違いです。
科学的に一番危険なのは
科学的に一番危険なのは「一足飛び」
例えば、
A
「研究方法に問題がある」
↓
B
「だから研究結果は信用できない」
↓
C
「だから患者の症状も嘘」
↓
D
「だから診断は誤診」
↓
E
「だから医師が捏造した」
という論理。
AからBには、場合によっては十分な根拠があります。
しかし、
BからC、CからD、DからEには、それぞれ別々の証拠が必要です。
ところがSNSなどでは、これが一気に飛んでしまうことがあります。
これは危険です。
逆方向もまったく同じ
反対側にも同じことを言わなければ公平ではありません。
A
「接種後に症状が出た」
↓
B
「同じ症状が複数人に存在する」
↓
C
「研究で関連が報告された」
↓
D
「だからワクチンが原因」
というのも、途中に大きな飛躍があります。
特に観察研究では、
関連と因果関係は違います。
ここを理解しないと、科学的な議論ではなくなります。
「証拠を見る」
だから私は「どちら側につくか」ではなく「証拠を見る」
私は、ワクチンを推進する人の言葉だから正しいとは思いません。
同時に、ワクチンに反対する人の言葉だから正しいとも思いません。
医師だから正しいわけでもない。
患者だから正しいわけでもない。
行政だから正しいわけでもない。
製薬会社だから間違っているわけでもない。
見るべきなのは、
その主張を支える証拠は何なのか。
です。
「反ワク」という言葉
「反ワク」という言葉について
私は、「反ワク」という言葉そのものを使うなと言いたいわけではありません。
実際に、
「ワクチンそのものを否定する」
という思想や立場を持つ人はいます。
しかし、
ワクチンについて一つでも疑問を持った人を、すべて「反ワク」と分類することには問題があります。
例えば、
「この副反応についてもっと調べてほしい」
と言う人。
「この研究の方法に疑問がある」
と言う人。
「接種後に自分の体調が変わった」
と言う人。
「救済制度の判断に納得できない」
と言う人。
これらの人を全部、
「反ワクだから信用できない」
と処理してしまうのは、科学的な議論ではありません。
被害を訴える人にも
被害を訴える人にもお願いしたい
ここは私自身にも向けた言葉です。
被害を訴える側だからといって、何でも正しいわけではありません。
根拠のない情報を拡散してはいけない。
都合のいい研究だけを引用してはいけない。
反対の研究も読むべきです。
「可能性がある」と「証明された」を混同してはいけない。
そして、間違っていたら訂正する。
これはとても大切です。
被害を訴えることと、科学的に誠実であることは両立できます。
むしろ両立させなければいけないと思います。
批判する人にも
反ワクを批判する人にもお願いしたい
そして、こちらも同じです。
科学を大切にするなら、
最後まで科学的であってほしい。
相手の主張が間違っているなら、
「反ワクだから」
ではなく、
どの研究の、どの部分が間違っているのか
を示してください。
論文の方法に問題があるなら説明してください。
統計に問題があるなら説明してください。
因果関係が証明されていないなら、その根拠を示してください。
それで十分です。
患者本人を嘘つき扱いする必要はありません。
医師を捏造者扱いするなら、故意の捏造を示す証拠が必要です。
「研究に問題がある」と「人間が嘘をついた」は同じではありません。
COVID-19ワクチンにも
そして、これはCOVID-19ワクチンにも言えること
ここは重要なので、明確にしておきます。
今回ここまで検証した中心は、
HPVワクチンをめぐる議論
です。
したがって、
「HPVワクチンについてこうだった」
という研究結果を、
そのまま
「COVID-19ワクチンについても同じだ」
とすることはできません。
ワクチンの種類も、接種対象も、研究データも、症状も違います。
COVID-19ワクチンについては、COVID-19ワクチンそのものについて別途、一次資料と疫学研究を検討する必要があります。
しかし、
「因果関係が証明されていないこと」と「患者の症状が存在しないことを混同してはいけない」
という議論の原則は共通しています。
科学とは
本当に科学を大切にするなら
科学とは、
「自分の信じていることを証明するために論文を探すこと」
ではないと思います。
自分に都合の悪い研究も読む。
相手側の根拠も確認する。
研究の弱点を認める。
自分側の弱点も認める。
そして、
証拠が変われば、自分の考えも変える。
それが科学的な姿勢なのではないでしょうか。
たどり着いた答え
私が今回の検証でたどり着いた答え
今回、HPVワクチンをめぐる研究を調べて、私はどちらか一方を完全に正しいとは思えなくなりました。
むしろ、両方に正しい部分と問題のある部分がありました。
ワクチンを推進する側に正しい部分
大規模な疫学研究やWHO、EMAなどの評価では、HPVワクチンとCRPS、POTSなどとの因果関係を支持する十分な証拠は確認されていません。
これは無視できません。
しかし、推進側が注意すべき部分
そこから、
「症状を訴える人は嘘」
「診断は全部捏造」
「患者は反ワクだから信用できない」
と進むことには、別の証拠が必要です。
ワクチンに慎重な側に正しい部分
接種後にさまざまな症状を訴える人が実際に存在し、それらを研究した論文も存在します。
SPECTなどの検査所見を報告した研究もあります。
名古屋スタディについても、単純に「何の関連もなかった」と言い切ることはできません。
しかし、慎重派にも注意すべき部分
症状が接種後に起きたことだけで因果関係を断定することはできません。
HANSという概念が提唱されていることと、HANSが医学的に確立した疾患であることも別です。
撤回された研究を現在の確立した証拠として扱うこともできません。
⸻
最後に
私は、ワクチンについて疑問を持つ人を「反ワクだから」と切り捨てる社会にもしたくありません。
同時に、ワクチンを推進する人を「推進派だから」と全部否定する社会にもしたくありません。
患者だから正しい。
医師だから正しい。
行政だから正しい。
研究者だから正しい。
そんな単純な話ではありません。
人ではなく、主張を見る。
肩書きではなく、根拠を見る。
そして、
「分かっていること」と「まだ分かっていないこと」を分ける。
これが必要なのだと思います。
⸻
被害を訴えている人へ
あなたの症状が存在することと、
その原因が何なのかという問題は別です。
だから、
「因果関係が証明されていない」
と言われたとしても、
「あなたの症状は存在しない」
という意味にはなりません。
一方で、
「ワクチンが原因だ」
と断定するためには、それを支える医学的根拠が必要です。
だからこそ、
症状は症状として大切にしながら、原因については冷静に検証する。
その姿勢を私は大切にしたいと思います。
⸻
反ワクを批判する人へ
科学を大切にするなら、
どうか「反ワク」という一言で人を終わらせないでください。
間違いは、証拠で指摘してください。
研究の問題は、研究として批判してください。
因果関係がないというなら、その根拠を示してください。
そして、
患者本人を攻撃することと、医学的な主張を批判することは分けてください。
「研究の結論に同意しない」ことと、
「その患者は嘘をついている」
ことの間には、大きな違いがあります。
反ワクと呼ばれている人へ
そして、反ワクと呼ばれている人へ
こちらも同じです。
自分たちに都合のいい研究だけを使わないでください。
反対の研究も読みましょう。
間違った情報は訂正しましょう。
「可能性」と「証明」を混同しないようにしましょう。
そして、相手を「御用」「工作員」などと決めつけるのではなく、相手の主張そのものを検証しましょう。
「検証」だと思う
私たちに必要なのは「敵」ではなく「検証」だと思う
ワクチンについて意見が違ってもいい。
接種する人がいてもいい。
慎重になる人がいてもいい。
接種後の症状について調べてほしいという人がいてもいい。
ワクチンによって助かったと感じる人がいてもいい。
接種後に人生が変わったと感じる人がいてもいい。
それぞれの経験を、最初から嘘にする必要はありません。
そして、それぞれの経験を、そのまま医学的な因果関係の証明にする必要もありません。
経験は経験として尊重する。
科学的な因果関係は科学的な方法で検証する。
この二つを同時にやればいいのです。
許せる社会
「分からない」を許せる社会であってほしい
科学には、
「現時点では分からない」
という答えがあります。
それは敗北ではありません。
むしろ、誠実な答えです。
研究が増えれば結論が変わることもあります。
新しいデータによって、今までの考えが修正されることもあります。
だから私は、
「絶対に安全」
とも、
「絶対に危険」
とも、簡単には言いたくありません。
証拠が示しているところまで言う。
証拠が届いていないところでは、断定しない。
そして、苦しんでいる人を置き去りにしない。
それが、ワクチンをめぐる議論に必要な最低限の姿勢ではないでしょうか。
⸻
最後に、一つだけ
私は、ワクチンに疑問を持つことそのものを恥じる必要はないと思います。
しかし、
疑問を持つことと、何でも信じることは違います。
そして、
ワクチンを信頼することと、すべての疑問を否定することも違います。
どちら側にいるかではなく、
何を根拠に、何を言っているのか。
そこを見ていきたい。
「反ワク」という言葉で人を片づけない。
「推進派」という言葉で人を片づけない。
患者を侮辱しない。
研究者を根拠なく犯罪者扱いしない。
そして、自分自身も間違っていたら訂正する。
そのくらいの冷静さを持って、私たちはこの問題を考えていきたいと思います。
ワクチンをめぐる議論で、本当に戦うべき相手は「人」ではありません。
戦うべきなのは、根拠のない断定です。
そして、最後まで残すべきものは、
人を傷つける言葉ではなく、検証できる事実です。
⸻
参考資料
* WHO・GACVS「HPVワクチンの安全性評価」:CRPS、POTS、多様な症状などについて、因果関係を支持する証拠を確認していないと評価。
* 厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A」:接種後に報告されている多様な症状と、因果関係についての現在の説明。
* 名古屋スタディ:71,177人を対象とし、29,846人を分析した疫学研究。
* 名古屋スタディの健康者接種バイアスに関する2024年研究。
* 名古屋スタディの2025年再解析。
* EMAによるHPVワクチンとCRPS・POTSの評価。
※この記事は、HPVワクチンをめぐる公表研究・公的資料を検討したものです。HPVワクチンに関する知見を、そのままCOVID-19ワクチンの個別事例に当てはめるものではありません。個別の健康被害については、個々の診療記録、検査結果、接種前後の経過などを含めて判断する必要があります。
⸻
厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A」
WHO「HPV vaccines: Safety」

